汚水 藻野

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夢 現実
「偽物でもそれは本物の愛だったんだ」

最初に母親と会ったとき、俺は感動の再会にもかかわらず、泣きも笑いもしなかった。
溢れたのは呆れに近い放心状態。

なんとなく、気づいていた。

それに気付きたくなくて、見たくなくて、知りたくなかった。
だってそれは「夢」だったから。

それに気付いて、見て、知ったら。
俺の知りたくなかった「現実」を見せられる。

俺にとっては「夢」でも、あの母親からしたら「現実」なのか。ああくそ、……。

その時だけ、

いっそ偽物か本物、どちらかに染まりきっていて欲しかった。

「ああ、こんなにも大きく育ってくれて…」

「君の母親は、君を本当に愛していたよ」

声も顔も全部同じなのに。

_2023.12.4「夢と現実」

AIと生身の人間かどうかで、こんなにも違う。

12/4/2023, 11:44:46 AM