神様だけが知っている
心が動かなくなった。
別に困らなかったから、放っておいた。
そしたら、色んなことがどうでも良くなった。
赤く燃える空を恍惚と見入っていた。
この世界にある色の中で最も綺麗。
邪魔をしてくる奴らがいて殴って蹴ったら、気付いたら殴って蹴り返されて、そして地面に押し付けられていた。視界が地面で覆い尽くされたからふざけんな、と騒いだら、両手は拘束されてたし、自分を拘束した奴が警察官であったことにようやく気付いた。
冷たい無機質な部屋に入れられて無理やり椅子へと座らされる。冷たい。
前に座るのは日焼けしたガタイのいい男。
「なぜ放火などした」
何やら話しかけられているのは分かったが、耳に入ってこないので、さっき見た光景を思い返していた。
思い出には雑音が入らなくてイイ。
初めは小さな火が、色んなものを燃やしてだんだん大きくなった。建物全体を燃やして、暖かくて、黒煙と炎よ赤のコントラストが最高に綺麗だった。
目の前の男がイラついているのは分かった。
彼の言葉はどうにも入ってこない。
もう、心は壊れる。
いつから壊れてるかなんて自分でも分からない。
まともになれないのなら、壊れていくしかない。
……あの炎、綺麗だったな。
雑音は入らない。
もう思い出の中で再生出来ればいいやと、そう思う。
︎✦︎
俺は疲れている。
頭のおかしい犯罪者って存在するらしい。
こちらの話を聞いているのか聞いてないのか、視線を一点に向けて、石のように固まっている。
薬中のように見えるが検査では何も出なかった。
素で頭が狂ってるとしか思えない。
こちらが話し掛けづけるのにも飽きた頃、何も語ろうとしない放火犯はとうとう頭がイカれたらしい。
気味の悪い笑みを浮かべたと思えば恍惚とした表情になった。
捉えた男は身分証を持っていなかった。というか、ライター以外持ってなかった。
防犯カメラを追って男の家を探しているが、大変なのだ。
せめて名前くらい聞かないとなぁ、と刑事は反応しなあい男に声をかけ続けた。
7/5/2024, 2:01:29 AM