父との思い出はほんの数えられる程度しか覚えていない。
今も父が生きていたらどんな生活を送っていただろうか。
父は私が中学生の頃に亡くなってしまった。
大好きだった父はバイクの事故で脳を傷つけ、すぐ怒鳴るようになった。母と喧嘩の毎日が続いた。
そのせいで私は父の事が嫌いになってしまった。
父は急に入院する事になった。私はほっとしてしまった。
これで母との喧嘩を見なくてすむんだと。
三年以上父は入院していた。
私は一度もお見舞いに行かなかった。父が怖かったから。
お見舞いに行っている母に見せられた写真で私は絶望した。
体格の良かった父がガリガリになって車椅子に乗っていたのだ。
その後も私はお見舞いに行かなかった。行けなかった。
よぼよぼになってしまった父に会うのが怖かったのだ。
お医者さんから母に連絡が来た。
父はいつ亡くなってもおかしくない状態だと。
私達は父の元へ行った。
私は三、四年ぶりに父にあった。震えが止まらなかった。
あんなにうるさかった父が人間とは思えない姿になっていたのだ。私は父の手に触れた。
涙が止まらなかった。まだ生きているのに。
父は意識も全然無いなはずなのに少し微笑んでそっと手を握ってくれた。看護師さんがお父さん娘さんに会えて喜んでますよ。と。
私はここから離れるのが怖かった。
家に帰ったらもう二度と生きてる父には会えなくなるから。
…………数日後父が亡くなったと連絡がきた。
長くなってしまったが、初めてちゃんと思い出した。
7/17/2024, 4:47:03 PM