筋トレを早々に切り上げる。
特に目的がある訳でもなく、友達が皆、僕の家に来ている。
これから始まるらしい逃避行に胸が踊る。
美味いうどんを食べたい
誰かが言った。
僕らはただ腹を抱えた。
僕らの中で運転免許を持っているのは一人だけだったからだ。
馬鹿なのは全員だった。
運転免許を持っているやつも腹を抱えていた。
急にできてしまった目的の為に、福岡から香川へ向かう。
長い長い夜道だった。
運転免許がない手前、僕らはガソリン代を捻り出し、寝ないように(と言いながら寝てしまうやつもいたのだが)と運転手をサポートした。
夜とも言えない仄暗い時間を駆ける。
僕らは瀬戸大橋の上だった。
瀬戸大橋ほどの煙突を拵えた船は、腹を抱えたはずの僕らから言葉を奪った。
夜明け前だった。
人は皆、残酷にも等しく時間を享受する。
甘いはちみつのような、或いは母の膝の上のような、そんなまどろみの中に僕らはいたはずだった。
それがどうしたのだと現実が幅を利かせるのだ。
免許を持てない僕は、昨日を夢見て床につく。
夜明け前
9/13/2022, 1:47:39 PM