『小さな命』
虫が腕をはっていた。
俺は驚いてその虫を手で叩いた、反射だった。
手のひらを見た。
先程まで生きていた虫が無惨な姿で死んでいる。
ああ、最悪だ。手が汚れてしまった。
ティッシュで拭き取ろうとしたが、なかなか汚れは落ちない。
今日は帰りに変な宗教団体に冊子を押し付けられたし…些細なことばかりではあるが、最近どうにもツイてない。
ひとつため息をついて、興味本位で読んでいた冊子をティッシュと共にゴミ箱に投げ入れる。
早く手を洗わないと。
俺は洗面所へ向かった。
「犬や猫などの動物はもちろん、虫だって生きています。
彼らと人間に違いはありません。
その小さな命を私たちは大切に扱うべきなのです」
そういえば、あの冊子を渡してきた人がそんなことを言っていたっけ。
「小さな命って、所詮は虫だしな。」
水を止め、改めて手のひらを見る。
汚れは綺麗に洗い落ちていた。
2/24/2024, 12:40:35 PM