浅塩

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 「いってきます…」
「今日終業式だから授業ないんでしょ?何で手提げ持っていくのよ」
改めて指摘されると少し恥ずかしくて、無視して駅に向かう。
1人電車で心を落ち着かせる。大丈夫、大丈夫、大丈夫…
学校に着くとみんなとの荷物の違いが分かりやすい。
リュックがほぼ空っぽで良かった。慌てて手提げをリュックの中にしまう。
教室にはみんないるから、帰り渡そう。いつもみたいに途中から電車で2人になれるんだから。
その後先生の話も、何もかも全く頭に入らなくて、気づいたら下校時間になっていた。
「終わったね〜帰ろー」
いつもの友達5人と帰る。電車に乗り、1人、2人とそれぞれの駅に降りたら、2人になる。
さりげなく渡したいのに手が動かない。
「ねー冬休みの宿題多すぎじゃない?」
「ほんとそれなー!」
よし。この会話の中でさらっと渡そう。
でも、つい会話が弾んでしまいタイミングを掴めない。
『次は…〇〇』
車内アナウンスが聞こえる。降りてしまう。
「あっ、次だ」
今しかない。
「ちょっと早いけど、誕生日おめでとう!」そのまま私はリュックから手提げを取り出す。「これ…プレゼント」
その子はポカンと驚いたような顔をして、にっこりと笑った。
「ありがとう。めっちゃ嬉しい。」
私も嬉しい。君が嬉しそうに笑ってくれて。
そして電車が止まった。
「本当にプレゼントありがとね!じゃあ、来年!ばいばい〜」
「うん、ばいばい」
渡せて良かった。最後に君の笑顔を見れたから。
私と友達になってくれてありがとう。

12/23/2022, 11:30:09 AM