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【相合傘】

空を見上げると大雨が降っていた。
傘をさしても濡れるだろうな…
そんなことを考えながら鞄の中から折りたたみ傘を探す。

なんとなく横を見ると、空を見上げている横顔が見えた。
その横顔はとてもキレイで、まるで時が止まったかのように見惚れてしまった。
ふと手元を見ると傘を持っていないようだった。

周りの人が傘をさして、大雨の中を歩き去っていく。
急いで鞄を探り、折りたたみ傘を取り出す。

「もしよければ、傘、お貸ししましょうか」
勇気をだして声をかけてみる。

「いえ、そんな…」
それはそうだ。こんな雨の中、傘を貸すなんて意味のわからないことを言われると誰でも戸惑うだろう。
2人の間に気まずい空気が流れる。
だけど直感的に、この出会いを大事にしたい。そう思った。

「あの!もしよろしければ駅までご一緒しませんか?大雨ですし、結構濡れると思うんです。そこの駅に行くので、もしあなたも駅に行くのであれば。」

そこまで言って、自分の必死さに気づく。

「すいません、いきなり。知らない人にそんなこと言われても気持ち悪いですよね。失礼しました。」

気持ち悪がられただろうか。と申し訳なく思い、謝罪する。

「すいません…では」
気まずい雰囲気に耐えきれず、急いでこの場を立ち去ろうと思った。なのに久しぶりに使った折りたたみ傘を開くのに手間取ってしまう。

「…あの!…もし差し支えなければ、その、駅まで、傘に入れて頂けませんか?」

振り返ると、キレイな瞳と目が合う。すぐに目を逸らされたが、顔がほんの少しだけ赤く染まってるように見えた。

「…ぜひ。」

ようやく開いた傘に入り、雨の中を2人で歩き出した。


6/19/2023, 12:53:58 PM