時雨(14)

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「ふり」って凄く大変でそれでいて凄く必要なことだ。自分の気持を全てさらけ出していたら人はだれも寄り付かない。生きる上で立場上有利になるように使う騙し細工だ。自分を殺し感情を押し込め黙って笑って人に好かれるような言動を繰り返す。これができなければ人と関わることなどとても不可能だ。嫌われ、罵倒され、人間の輪から外される。浮いて二度と溶け込めない。
人生に細工は不可欠だ。傷つきすぎた脆い硝子の心を細工して、美しく、華々しいことしか見えないように。壊されないように。もう二度と心を失うことがないように。傷ついたら細工して、細工したら傷ついて。学ばない。学べない。人間は皆弱いくせに、自分の心を隠すから皆、傷つけ合う。本当は皆、弱くて脆い。
私はずっと人間誰でも心根は同じだと思っていた。そうならいいと思う。皆違うのだということに気づくまではどれだけ何を言われても、睨まれても平気だった。この人も根っこは私と同じで怖がりなんだ。こうやって容赦無い言葉を浴びせかけてきても、睨んできても、虚勢を張っているだけで本当は、今、とても怖いんだって。本当にそうならどれだけいいだろう。人に嫌われ、孤独になることを恐れ人生に「ふり」という細工をして、自分を誤魔化す。自分が嫌いだ。大嫌いだ。時々触れた針のような言葉に心がグサリとえぐられ細工が剥がれそうになる。また、大丈夫だよ。全然平気だよ。人の反応が怖くて相談できない。きれいな硝子細工の心を誰も疑わない。気遣わない。全てを放置して全てを投げ捨てて消えてしまうことができれば。こんな人生に細工を施すためだけに生まれてきた訳じゃないのだから。終わらせてしまいたい。この硝子を割ってしまいたい。心なんて「ふり」で、「嘘」で、凍ってしまえばいい。

お休みなさい。

3/30/2024, 10:55:34 AM