彼女と同じ空間にいると途端に行動を制限される。シャーペンを持つにも音を立てないようにしなくてはいけないし、スマホなんていじるなんてとんでもない。鼻だってまともにすすれないし、彼女を見ては絶対にいけない。
いつだって彼女はこちらを見ているのだ。
暖かいものなんかじゃない。その逆。
冷たくて、鋭い眼差しを。明らかな軽蔑を。
彼女が部屋から出ていくとどっと疲れて姿勢を崩す。しかしまた姿勢を戻す。いつ彼女が戻ってくるかわからない。そのことがたまらなくこわいのだ。
もうやってらんなくて、テレビをつける。
どうやら近くで火災があったらしい。厚化粧のニュースキャスターが言った。
「いっそのこと全部燃えてくんねえかな」
――鋭い眼差し
10/15/2024, 11:23:53 AM