狼星

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テーマ:部屋の片隅で #387

部屋の片隅で佇む少年が見えるようになったのは
ここに引っ越して間もなくのことだった。
またかよ……。
俺はそう思いながらも見ないふりをした。
「あまりそういうものに干渉しないほうがいい。
 あんたも連れて行かれるよ」
母がよく口にしていた言葉だ。
たしかにそうかも知れないと思い、
20になるまで守り続けてきた、母の言いつけ。
やっと一人暮らしができると思ったのに。
俺はそう思いながら大きいため息を付いた。

それからというもの何事もなく日常が続いた。
少年は部屋の片隅に未だにいるが気にしなくなった。

そんなある日だった。
俺は仕事に疲れフラフラしていた。
気がついたら病院にいた。
信号が赤なのにも関わらず渡ろうとしたらしい。
ただ俺は無傷だった。
それからいつものように家に帰ると
少年がいなくなっていた。
部屋の片隅で少年が座っていた場所には
切れたミサンガがあった。

12/7/2023, 12:04:29 PM