街へ
アスファルトの上を進む。
進む。
進む。
進む。
いつの間にか自分の足で進んでいるのか、
それとも地面が動いているのかわからなくなった。
ここのところずっと家に篭ってばかりだったことを思い出し、衝動的に出てきたのはいいものの何処に行こうかは決めていなかった。
ただただアスファルトのひびを追って歩いているだけだ。
このまま行けば街路樹が見え、その先には商店街があるはずだ。
財布も持たずに出てきたが寄ってみようか。
電子マネーが使えたらなにか買っていこうか。
そんなことを考えながら歩いていると、前方に紐で縛られている家を見つけた。
正確に言えば、家の前のフェンスや窓の一部に紐がかかっているようだ。
縛っているにしては無造作でぐちゃぐちゃしていて、お世辞にも綺麗にかけられているとは言えない。
それが何か検討もつかないまま、徐々に家に近づく。
目と鼻の先ほどまで来るとその正体に見覚えがあり、ふと子供の頃を思い出した。
今と同じような時期に車で出かけているとよく見かけていた。
クリスマスは子供にとって誕生日と同じくらい楽しみな季節だ。
窓から景色を見ていると、キラキラと光る家が目に入る。
隣の席で弟が声を上げて喜んで、両親も感嘆している。
自分ももちろんはしゃいでいた。
いつ見ても、不思議な気持ちになる。
キラキラしているだけでなく、限られた家しかできない特別感、チカチカと色が変わる様、家によって飾りつけが異なる、見つけた時だけ夢中になれる、心惹かれる要素がこれでもかというほどある。
そういう家を見かけてはキャッキャしていた自分と弟を可愛らしく思い、自然と口角がうごく。
電気がつくまで少し待ってみようか。幸い日も落ちているし、後は暗くなる一方だ。
光っているところがみたい。
輝くところを見てみたい。
紐と電球たちは電気が来るのを今か今かと待っているようにおもう。
さっきのみすぼらしさはなくなっていた。
久しぶりに子供の頃を回想した気がする。
今年はクリスマスをまだ味わっていなかったな、なんて考えていたら自然と歩いてきた道を戻っていた。
街に行こう。
あっちにはもっと大きい街があったはずだ。
今からのことを考えると少しワクワクしてきた。
1/28/2024, 3:10:23 PM