NoName

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柔らかそうな頬が、柔らかい光に照らされている。
「引っ張ったら、おもちみたいに伸びそう」
ぷに、という擬音がぴったりで。思わずつつこうとして、思い直し、ぴたりと手を止める。許可なく触るのは、非常によくない。訴えられたら負ける、なんて考えて、思わずふふと笑う。
春の風が、前髪を揺らす。あたたかな日差しに、思わずあくびがもれる。春の気持ちのよい日、待たせてしまった友人の寝顔に、余計に眠気を誘われる。
部室が閉まるまで、まだ時間はある。起きるまで待っていようと決めて、古いパイプ椅子を引っ張り出した。
言葉にできない気持ちを、文章という形にした。書き溜めたノートに、新たな文を綴る。
春はまだ、はじまったばかりだ。

4/11/2024, 4:31:18 PM