落下
考えて、考えて、考えてみて。
結果くだらないな、と思った。
学校の下らないいじめだって、どうでもよかった。
強がりとかではなくて、本当に言いたいヤツには言わせておけ、と思ってる。
「はっ、出来もしないこと出来るって言うなよな」
「……っ」
いわゆるいじめっ子が、いじめられっ子を詰る。
何がどうしてこうなったのか、始まりすら分からないけれど、この3階の、ベランダから落ちてみろ、という事らしい。
3階から落ちたら死ぬんじゃないか。
馬鹿馬鹿しいと思うのと同時に、教室の空気も悪すぎて俺は立ち上がる。
椅子を動かした音で、全員の視線を浴びるが、気にせずにベランダに向かった。
「おいなんだよお前…」
いじめっ子がなんだか急に慌てた声をだした。
ベランダの柵に乗って、下を眺めるとやっぱりすこし高かった。
後ろで「おいばかっ」「危ないよ!」「止めよう」「いや、出来るわけないって」と口々に言うけど別に止まる気もない。
歩くような気分で、地面に向かってダイブした。
少しの落下感。
そして、衝撃。
結論から言えば俺は怪我をした。
割と綺麗に受身をとったけど、少し入院した。
体の心配よりも頭の心配をされた。家族も同様に。
「ごめんね」と謝ってきたのはいじめられっ子である。
「なにが」
「僕のせいだから」
「違う」
「でも、あの時、飛び降りるって話したのは僕なのに」
「俺は好奇心であの日飛んだ。その前の話は知らないし、たぶん俺の頭が可笑しいだけだ」
「でも……」
「思ったよりも滞空時間が短くて残念だった」
考えて、考えて、考えてみた。
入院中までも考えてみた。結果思ったよりも。
「飛び降りは自殺に向いてないな」
残念だった。
いじめられっ子が泣き始めたので、「俺がおかしいんだよ」と俺は笑った。
6/18/2024, 1:46:33 PM