狼星

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テーマ:今日の心模様 #162

今日の心模様は曇だなぁ。
24歳、会社員。山本。
何の変哲もない毎日にボーっとしながら生きている。
気がつけば24歳になっていた。
パッとしない人生を歩んできた私。
パッとしない私。
今日は会社の屋上、
曇り空の下1人ポケーッと空を見上げていた。

不意になにか熱いものが頬に触れて
我に返る。
「何ボーッとしてんだよ」
私の頬に熱い缶コーヒーを当てた人物、
それは同期の笹野だった。
「急に熱いものを当てないでください」
私がそう言うと笹野は
「ははっ。まだ直らないのか、敬語」
笑って私に缶コーヒーを投げる。
「うるさい」
私が缶コーヒーキャッチするのと
それに対する答えを出すタイミングは同じだった。
私は咄嗟に言葉を出すと
敬語になってしまう癖があった。
笹野は知っている。
高校の時、笹野と出会った。
何かと腐れ縁のようなものがあって、
短大でも一緒だった。
でも恋愛観とか、
私達の間にはなかった。
恋愛関係を持てば、
私もパッとした人生を歩めるだろうか。
お互いを好きになって、
結婚して、
いつか子供を産んで、
成長を見守り、
朽ちていく。
普通かもしれない。
でもその普通すら、
私にとっては輝いて見えた。
「またなんか、難しそうなこと考えてる」
笹野にそう言われて我に返る。
笹野の口には一本の火がついた煙草が
くわえられていた。
「煙草、やめたんじゃないの」
私がそう言うと
「う〜ん……。やめようとは思ったんだけどね」
そう言ってフーっと灰色に染まった煙を口から出す。
「嫌なこともこうやって出せたら、煙草も止められるのになぁ……」
笹野は灰色の煙を見て言った。
「そんなんじゃ、恋愛もできないわよ」
私がそう言うと笹野は私に視線を向ける。
「何? 煙草嫌い?」
「好きな人のほうが今の時代、少ないと思うけど?」
そう言った私に笑う笹野。
「まぁな。……でも、恋愛は当分いいかな」
その言葉に私の心に穴が空いた気がした。
物理的には塞げない穴。
24年間、恋なんてしたことない。
でもそれを笹野は知っている。
私は知らないのに。
なんだかそれが少し憎たらしくて。
何も言わずに笹野がくわえている煙草に目を向ける。
「煙草なんて嫌い」
私は小さく呟いた。
笹野に聞こえるか、聞こえないかの声で。




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4/23/2023, 11:25:06 AM