脳裏
衣替えをする度に開ける引き出し。必要なものを取り出し、来年使うものを仕舞う。
決まったことの繰り返しの中で、1つだけ必要のないことをする習慣がある。
1番上とその下の2つの引き出しを開けること。
開けたところで取り出す衣服はひとつもない。本当に開けて中を見て、また閉じるだけ。
仕舞ってあるもの、それは息子が幼い頃着ていた衣服や雑貨類。お遊戯会で着た衣装から体育の授業で使う赤白帽、制服は勿論、お気に入りで何度も着せてお出かけしたチェックのセーターなど。
違う引き出しには片手にすっぽり収まるベビーシューズや戦隊ヒーローをモチーフにした運動靴など様々。
脳裏に浮かぶのはあの頃の息子の笑顔。いつも笑顔だった。
あの頃に戻れたらもっと上手に育てられるんじゃないかと思ってしまう。
もっといっぱい遊びに行けばよかった。美味しいもの食べさせてあげたり、欲しいもの買ってあげたり、もっと細かいところに気づいてあげたり、、。
今になって悔やんだってどうにもならないのはわかってるけど。
あの頃の笑顔に胸が熱くなるのと同時に、後悔の念で胸が詰まりそうになる。
今はもうとっくに私の背を超えた息子。(私が母でごめんね)と思いながらも顔を見れば軽口ばかり。
「母ガチャ」なるものがあるとしたら、彼は大ハズレを引いてしまった。
「来世は大当たりを引けますように」と祈うことで、拭えない罪悪感を消そうと躍起になる大ハズレ母の私であった。
end
11/9/2024, 11:23:05 AM