エグチーセット

Open App

「AがBの国を滅ぼしたんでしょ?」
そう私たちは習っている。
「大変よく出来ました」
そう肯定した。
だが如何にも彼の言葉の節々から噛み合わない。馬鹿にしている、と言うわけではない。
生徒の反応を楽しむ教師のようだ。
すいすい細い道を置いていかれないように続く。行き先も気になるが彼が言わんとしていることも気がかりだ。
「違うの?」
思わず聞いてしまった。
「正確には半分正解半分ハズレ」
「半分」
ようやく目的地らしい。足を止めた、と思えば此方を振り返る。
「我々が教育機関で唱えられているのは歴史の一側面でしかない」
「先生。もっと短く」
「つまり、教えるに当たっていくらか簡略化され不都合だと廃止された面がある」
私の要求に呆れながら結論を披露した。
「……別に珍しくないと思うけど……」
歴史など視点が変わるだけで途端に別の顔をする。
「さてここからはもう一つの物語」
古びた書籍を懐から取り出した。
今から数えて大層古い年代。授業では古典と言われるような古い書体が敷き詰められており若干頭が痛くなった。
「まさか歴史の再演しようなんて言わないよね」
「さて、都合が悪いと言ったのは覚えているかい。その都合は、誰にとって悪いんだろうね」

10/29/2023, 4:10:37 PM