「実は私には、嘘かどうかなんて分からないんですよ」
「私は魔法使いではないので」彼女は言う。「結果的に嘘を必ず見破れる能力とも言えますが、瞬時に真偽が感じ取れるわけではなく、それなりにこちらにも労力は必要なんです、万能ではないんですよ。」淡々と、進行方向をまっすぐ見たまま迷うことなく歩みを続けながら。
「…と言いますと?」
どこに向かっているのかほとんど分からず、とりあえずおいていかれないよう横を歩く。
「顔や体全体も見ていますが、主に首の筋肉の動きを見ているんです。嘘をつく時人はみな多かれ少なかれ緊張する。その時の無意識の微妙な動きで判別するんです。」
「……分かるもんなんですか」
「人によって癖は違いますのでまずそこを監察するラリーは必要ですが、長く話せばより正確になり結果100%見抜けると言っていいです。」
「…なるほど」
「注意深く見る必要があるし、関わる人全員の癖なんて覚えきれない。私の前でほんの少しでも嘘をついたら全てバレてしまうと思われがちですが、そういうわけではないんです。」
そう告げる表情は相変わらず真顔で読めなかったが、彼女の苦労が少し見えた気がした。
「それともう1つ、根本的な欠点があります。
言いましたよね、私にはそれが嘘かどうかは分かりません。」
「……どういう意味ですか?」
「その人が本当のことを言っている時と嘘をついている時、それが区別出来るというだけです。
ずっと本当のことしか言わない人とずっと嘘しか言わない人、の違いは分かりません」
彼女はようやく歩みを止め、初めてこちらを向いた。
「あなたは、人間ですか?」
ああだれか、時を止めて。
11/5/2025, 11:41:57 AM