もう、終わりにしよう。
何をするにしても、文句。作ってもらった料理には一口も口をつけずに、調味料をかける。機嫌が悪ければ無視、酷い時は癇癪。そんな、恋人といっていいかも分からないようなやつの相手をする必要も無いはずだ。
そんなことはない、俺にはお前が必要だ、って。そう思ってたのはあなただけだよ。そんな説得力のない言葉で今更止まれる自分ではなかった。
だって、自分の酷さは自分が一番よく知っている。
今まで、ありがとう。こんな自分に根気よく付き合ってくれて。ベランダから階下を見下ろす。見上げるあなたと目が合う。せめて、最後は笑顔でいよう。
くしゃり。上手く笑えているかもわからない、歪んだ笑顔で空へと身を投げ出した。
「あ! 何すんの、髪が乱れる!」
「可愛いと思って撫でてるんだよ。」
「アンタな、たまにはそれかけずに食べてみてくれよ。」
「だって、お前の手作りなんて絶対美味しいってわかってるし。これ以上……胃袋まで掴まれたら大変だから。」
「はぁ。なんというか、複雑だが嬉しいよ。」
「俺が悪かったから、無視はやめてくれ。」
「…………。」
「なあ。」
「うるさい! 怪我人は黙ってて! なんで、庇ったの。あんなの、自分で避けられたのに。」
7/15/2023, 9:12:37 PM