澄んだ瞳
子どもを見ると皆澄み切った瞳をしている。
これが大人だとそうはいない。
どこかに思惑を感じる。
本人がいかに澄んだ瞳を持っていても、
そもそも私が濁りきった瞳をしているので、
見落としているのだろうとも思う。
そんな私でも澄み切った瞳を持った大人を見かけたことがある。
それは地元の回転寿司での事だった。
地元は海産が豊富で、回転寿司も美味しい店が多い。
よく行く寿司屋の、テーブル席からカウンター席が覗ける場所で寿司を堪能していたところ、その日はカウンター席が騒がしい。
座っていたのは彫りが深く、中年ではあるがスタイルも抜群。お洒落なカジュアルに身を包んだ恐らくイタリア系の1人の男性だった。
寿司をひとつまみするたびに全身で美味を表現している。その一挙手一投足に私だけではなく周囲の客もちらちら様子を見ているようだ。
男性は「えー...次はー... 大将!」
店内によく通るいい声で注文を始める。
「おぃしい おぃしいな.......Salmonをください!!」
注文をした瞬間の彼の瞳は
見たことない程澄み切った瞳をしていた。
なんてことはない話ではあるが、私はその瞬間をずっと記憶している。
私はこれから先、かつてないほど美味しい食べ物を期待し、料理を目の当たりにしたとして、
彼のように心から純粋な瞳を向ける事は出来るだろうか?
そんな事を考えている。
7/30/2024, 2:19:37 PM