【紫陽花】
色のない世界に住んでいた
最初から無かったのか
それとも知らぬうちに色が抜けて
モノクロームになったのか
そんなことはどうでもいい
とにかくこの街は灰色で
わたしはそれが当たり前だと思っていた
雨が降ってきた
蒸し暑い空気の中で
ただ傘もささずに歩いている
何かを探して
意味なんて何もない
ただ雨の中を歩いている
いつものこの道、いつもの時間
だけど今日はいつもと違う
雨が降っている
それから、それから
すれ違ったあの人と目があった
たったそれだけのことなのに
世界が姿を変えてゆく
まるで魔法のように美しい水色
それから鮮やかな紫、そして桃色
みずみずしい緑が雨に揺れて溶けていく
あの人は誰だろう
きらめく雨粒の中で
わたしの世界がいま鮮やかに色づく
6/13/2024, 10:29:15 AM