【お題】ジャングルジム
ジャングルジムといえば小学生の頃に誰もがてっぺんを目指してのぼったことがあるだろう。
ジャングルジムのてっぺんに座り見た景色は登りきった達成感と共になんとも言えない高揚感を感じるのだと思う。
だけど僕は昔から高いところが苦手だったのでその感覚を味わった過去は無い。
同級生の真似をしてジャングルジムを登ろうとしたことはある。それでも……どうしても高いところが怖いので途中で諦める。そのくりかえし。
今でも高いところは怖い。
他人から「なんで?」と聞かれるとなんでなのかそれは自分にもわからない。
ただ、高いところに行くというだけで心臓が早鐘を打ちはじめ冷や汗が流れ手足が震えだす。
そんな僕もいつの間にかしがないつまらない大人になってしまった。楽しくもない仕事と上司のご機嫌とりに嫌気がさす。
昼休み。
鬱々とした会社の外に出たくて昼食を食べるために入った小さな公園にジャングルジムがあった。他にもブランコと滑り台、パンダを模した遊具がある。
その中でもなぜかジャングルジムに心を惹かれた。
そして同級生の真似をして登ろうとしたけれど高いところが怖くて登れなかったあのジャングルジムを思い出した。
確かに僕はジャングルジムのてっぺんからの景色も達成感も知らない。
それでも、あの時間がかけがえのない時間だったと今ならわかる。
楽しかった。
そう、とても楽しかったのだ。あの頃がどうしようもなく。
昼食を食べ終えて見上げたジャングルジムと青い空は仕事で沈んだ僕の気持ちを少しだけ明るく上向きにしてくれていた。
9/23/2022, 7:36:44 PM