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その部屋には誰もいなかった。見渡すと棚の上のダッグエッグブルーの砂時計が動いていた。ひとけのない静かな部屋で、まるで砂の落ちる音が聞こえてくるように思えた。
「勝手に入らないでほしいな」
振り向くと女が腕を組んで立っていた。扉の前に、いつからいたのかと思うほど自然に。
「その砂時計触った?」
「いえ…勝手に人の物には触りません」
「合ってるんだけど他人の部屋に勝手に入る人に言われたくないんだよね
てか何しに来たの?私に会いに来たの?」
「……いえ
この砂時計をひっくり返した人です」
「…へぇ」

10/17/2025, 10:30:23 AM