「もう今年も終わりだね。ほんと一年早かった。」
この時期になると毎年と言っても過言ではないくらいにこの言葉を聞いているだろう。
教室に入るやいなクラスメイト達が盛り上がっていた。
皆朝から元気ですごいな。なんて感心しながら窓際の一番後ろの自分の席に座った。
「最近ほんと寒くて朝布団から出られないよ」
「わかる。朝の自転車も絶対手袋つけるもん」
「私も私も」
ふと校庭を覗くと一年生らしき女の子達三人組が盛り上がっていた。
「手ぶくろ」と聞くと私は去年の冬を思い出す。
君と出会ったのはあの坂道だった。
高校二年の秋、いつもと変わらず家を出て学校に向かって坂道を歩き始める。
すると突然後ろから『あの!』と声をかけられた。これが彼との出会いだった。隣町の制服を着た彼はどうやら一年の頃、私に一目惚れしたらしく話してみたいと声をかけてきたのだった。
それからというもの毎朝坂道からお互いの学校の分かれ道まで一緒に登校するようになっていた。最初は彼に対し何の好意も抱かなかったが次第に彼の優しさに惹かれていく自分がいた。そんな日々が続き二学期最後の登校日。今日はクリスマス当日だ。いつもの彼との分かれ道の別れ際、彼から『一年の一目惚れした日からずっと好きです。もし付き合えるならこの手袋受け取ってください』とこの中に入っているのであろう紙袋を差し出してきた。私の答えは既に決まっていた。
この手袋は世界で一番のクリスマスプレゼントだ。
12/27/2023, 12:01:41 PM