ヒトモス

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『溢れる気持ち』

午前に
「お手紙です」
と、俺宛に届いたお便り。
離れているあの子からだった。
なんとなく開けるのがもったいなく躊躇われて、気に掛かりながら、ずるずると、こんな夜更けにまで引き伸ばしてしまった。
真っ暗闇の中、外に出て座る。
風はないのに、空が泣いているみたいな不思議な音が聞こえてくる気がするほど、なにかの存在を感じてならなかった。
一つ大きく息を吐いて、手のひらの上で小包を開く。
すると、
溢れてきたのは透明な水だった。
夜のためか、まるで黒曜石の煌めきを閉じ込めたような、つらんつらんとした輝きを放っていて眩しいくらいだ。
それを零さないようにしっかり手でお椀を作っていると、
あの子の明るい声が聞こえてきた。
声と一緒に手のひらの中の泉にキラキラした文字が浮き上がって踊っては消えてゆく。
その文字は白金色をして、それは天の川のようだった。
ふと、天の川を渡って出会う男女の話が頭をよぎる。
1人のようで1人じゃない。
この世界で生きている間に気づけて良かったことを、改めて身に沁みて再確認した。
日だまりのなかのような言葉たちのあと、最後にあの子の輪郭がぼやけて見えた。
ぼやけていてもわかる笑った顔。
それはやわらかく揺れたあと、そのまま静かに消えていってしまった。

…感動しすぎてあっという間の恋文だった。
しばらく余韻に浸りながら手のひらを見つめていると、その泉に流星群が映り込んだ。それらは次々に流れてまるで川の流れのようになった。
思わず空を見上げると、見事な流れ星たちが、一途に行く先を目指して降り続けていた。
綺麗だ…。
手元に目線を戻すと、かけがえのないそれを口に含んだ。
僅か数分のお便りは、俺の世界に再び光を連れてきてくれた。
深呼吸して、夜の空気で肺をいっぱいにしたあと、俺はさっと立ち上がった。

2/6/2026, 9:06:10 AM