サメシャメ

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二人ぼっち

雨が降る中、私たちは歩いていた
「あの、すみません」
「はい」
私が振り向くと警察官が立っていた
「あなたに窃盗罪の疑いがかけられてます。署で話を聞かせていただいてもよろしいですか?」
「ちょ、ちょっと待ってください!私は窃盗なんかしていません!」
「今日、あなたと同じ格好をした人がアクセサリー店で店員を脅していたビデオがあります」
「…………わかりました。話終わったら家に帰ってもいいなら」
「わかりました」

結局警察署まで行ってしまった

ガチャ
「え、お母さん!お父さん!なんで来たの?!」
「お前が窃盗罪の疑いがかけられているときいてね、お母さんと一緒に急いできたんだよ。お前がそんなことをすると思わなかった」
「私はどこで育て方を間違えたのかしら……」
「だから!私はしてないって!私の話を聞いてよ!」
「どちらにせよ、お前はもう犯罪者だ」
「お父さん……お母さん……なんで……なんで私のことを守ってくれないの?私、今まで頑張ってたじゃん……成績も学年トップで英検だって漢検だって2級持ってるし、学校の成績だって全部5だよ?今までこんな頑張ってたのにこんなことで私を捨てるの?」
「あのね、もう過去は変えられないのよ。変えられるのは自分と未来だけ」
「…………嫌い、大っ嫌い!お父さんもお母さんも大嫌い!もう顔も見たくない!ほっといて!」
「あのね、」
「来ないで!」
「と、とりあえず今日は終わりにしましょうか。続きはまた明日で。」
「本当にうちの娘がご迷惑をお掛けしてすみません」
「ほらいくぞ」
「…………」

ガチャ
扉を開けると同時に私は思いっきり走った

足が痛くなっても走った

限界が近づいたとき私は海にいた
「なんで……なんでみんな私の話を聞いてないのに私を悪と決めつけるの……おかしいじゃん。君もそう思わない…………そうだよね、話を聞かないで決めつけるのが悪いよね」

梅雨の海は寒かった

「明日、学校に行ったらみんな冷たい目で見るんだろうな。今吹いている冷たい風みたいな。…………こんなところから逃げ出してやろうかな」

私は海に向かって歩いた
私は逃げているんじゃない
未来の自分を追いかけるのをやめたんだ

気づけば、視界が真っ白になっていた
辺りを見回すと一人の少女が立っていた

「ねえ、ここはどこ?」
と、声をかけた
「ここはね、うちと君以外は入れない秘密の空間だよ。うちはね、今までここに一人でいたから君が来てくれてすっごく嬉しい。………だけど、ここに来たってことはもう現実には戻れないよ。引き返すなら今だけどどうするの?」
「やだ。戻りたくない。ずっとここにいたい」
「そっか。じゃあ、今からうちは独りぼっちじゃなくって二人で二人ぼっちだね」

二人ぼっちだと気が楽でいいな

ルールも二人で決めれるし
一人じゃないから寂しくない
それに、窃盗罪の疑いがかけられているとかも言われない
最初からここに来ればよかったんだ

3/21/2023, 1:53:28 PM