福岡外食研究所

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 子供の頃河川敷でキャッチボールをしていて、捕り損ねたボールを追いかけてススキの草むらに入ったら、知らぬ間に腕に切り傷ができていた。ケガをした当初は何で切ったか判らなかったけれど、後にススキの穂に刃(正確には棘)があることを知り、見た目によらないということを学んだ。
 
 時が経ち大学生となり、体育会柔道部に入った私はある稽古の場で再びその時の気持ちを思い出すことになる。とあるススキのようなご老人と組み稽古をする段になりケガをさせまいと思いきり手加減をしていた私は、知らぬ間に畳に尻餅をついていた。投げられた当初は何故倒れたか判らなかったけれど、近くで見ていた同級生曰く、目にも止まらぬ足払い一閃だったそうだ。

 つくづく見た目によらないなぁと思い、起き上がりながらそのご老人の帯に施された名前の刺繍を見ると、そこに記されていたのは「ススキ」ならぬ「鈴木」という名前であった。

11/10/2022, 1:03:26 PM