「私を忘れないで」
小さく青いその花を見て彼女がそう言ったのは一体いつの事だっただろう。花の事なんて全くわからない俺は、それがその花の花言葉だなんて思いもしなかった。
戸惑う俺に彼女はただ微笑んで、何でもないと笑ってみせた。その時の彼女の寂しそうな笑顔を、俺はきっといつまでたっても忘れることができないと思う。
「きみを失ってから、もう季節が一回りしたよ」
――返事はない。
沈黙を貫く形だけの墓標に、小さな青い花の束を供える。
愛の言葉と共に。
【勿忘草】きみのことを忘れないよ
2/3/2023, 8:15:44 AM