August.

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「束の間の休息」

妹が死んだ。
交通事故だった。
妹は看護学生で毎日1時間半ほどかけて、山の中にある大学に通っていた。田舎の中でもトップクラスに入るほどの田舎にある大学なので、道はほとんど真っ直ぐに進み、信号もほとんどない道だ。そのため、よほどのことがない限り、事故は起こらないと近隣住民も言うほどで、10年程住んでる住民も、初めて事故を見たと言うくらいだ。
原因は対向車線からはみ出した車との衝突事故。相手は聞いたところ、飲酒運転をしていたみたいで、たまたま走っていた妹の車と衝突した。
妹はたまたまだったのだ。
たまたま飲酒運転していた車が、自分の方にぶつかって来て、死んだ。
誰がどう見ても、相手が悪い。
「きっと今頃ネットニュースにでもなって、コメント欄が荒れてるだろうな。」
そんな独り言しか言えない私は、性格が悪いのかもしれない。いや、人の心がないかもしれない。警察から妹の事故を聞いた時、真っ先に私はこう聞いてしまった。「妹は、即死でしたか?」と。
電話越しだったので相手の顔は見えなかったが、きっと、今聞くことではないと思ったのだと思う。警察は「おそらく即死だと考えられます」と淡々と言った。
「即死」という言葉に私は少しだけ安堵した。
彼女は私の妹だが、世間一般の妹ではない。私たち2人は双子だ。記憶はないが、母親の胎内にいる時から一緒だった。誰よりも彼女のことは知ってるつもりだ。
二卵性だから、好きなものも、嫌いなものも何もかもが違う。顔だって、大抵こっちから「双子なんです」と言わなければ気づかないレベルで、妹と私の身長差は20センチほどあるので、双子というより、姉妹に近い。妹は顔は、大人びているが、好きなファッションはスカートが多く、フェミニン系統の服をよく着ていた。148センチと平均より低い妹はよく、試着室で悶えていた。背が低いため、欲しいスカートが大体つま先まで覆ってしまい、裾上げをしなければならない。ただ店舗によっては裾上げだけでかなりの値段を取られるので、また悶えていた。
一方の私は真逆と言っていいファッションが好きだった。私服のスカートは一着ほどしかなく、ほとんどがダメージジーンズやスキニーパンツ。グランジファッションやストリート系統のファッションが好きで、2人で並ぶと、もはや姉妹どころではなく、真逆のファッションを好む友達のように映っていた。
私は168センチと女性にしては高い方だ。小学生の頃から後ろの方に並んでいたが、妹は大抵前から二、三番目だった。

10/8/2024, 11:04:43 AM