蓮池

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世界の終わりに君と

砂と石に塗れたこの惑星には、ボク以外誰もいない。
昔はボクに似た、ボクより大きな生き物がいたような気がするけれどみんな砂になって消えちゃった。
もうどの砂の粒が彼らなのか分からないや。
もしかしたらまだ会えてない仲間がいるかも、と期待してこの惑星を旅している。
歩いても歩いても、砂と石ばかり。
あまりに何もないから石を重ねてみたり、どれだけ石が遠くに投げられるか試してみた。
砂で仲間を作ってみようとしたけど、彼らが混ざってたらなんだか申し訳ないから止めておいた。
どれだけ歩いたか分からなくなった頃、ボクは小さなそれを見つけた。
青々とした緑と淡いピンク色の花弁を風で揺らしたそれは、確か花というやつだ。
(初めて見た!)
昔、仲間が教えてくれた。
この惑星は花が育つには水というやつがとても少ないから、育ちにくいらしい。
だからとっても珍しいんだ。
ボクはしばらく花を傍で見守ることにした。
小さなそれは触れるとあっという間に崩れそうで、ボクは花から少し離れて座った。
たくさん歩いたから疲れたし、少し休むくらい良いよね。
「君は家族はいないの?どうしてこんなところでジッとしてるの?」
初めて見る花という奴は無口で、ボクが話しかけてもなーんにも言わないんだ。
「もしかして、君も仲間を待ってるの?」
だったらボクと同じだ。
花はきっとボクと同じで、仲間が迎えに来るのを待ってるんだ。
「一人は寂しいでしょ?君の仲間が来るまでボクも待ってあげるよ」
朝が来て、夜が来て、ボクは花と一緒に毎日を過ごした。
色んな話をしたんだ。
ボクの仲間や思い出の話や、旅の話。
(なんだか眠いなぁ)
その内、ボクは眠ることが多くなった。
花のやつ、全然話してくれないからボクばっかり喋って疲れたんだ。
少しくらい寝ても良いよね。
「ねえ、君の仲間が来たら、教えてね…会ってみたいんだ…そしたら、君も、ボクとお話、してくれるかな…」
君はどんな声でお話してくれるかな。
起きたら、君の仲間とボクの仲間がいてくれたら嬉しいなあ。


花の傍で、小さな砂の山が風に吹かれて宙を舞う。
淡い花弁が一枚、砂と踊るように空へ昇った。

6/7/2023, 12:47:25 PM