「うわあ、雨かー……」
今日の予報にはなかった雨に、隣から嘆く声がした。
「もー、勘弁して欲しいよ」
勇気を出して声をかける。
「よければ予備の傘、貸すけど……」
マジで!サンキューな!ラッキ〜、と一気に機嫌が治るのに、私も気分が上がりそうになるのを抑えて、ちゃんと返してよね、と冷静に答える。嘘、返ってこなくてもいい。
「せめて体育の後に降ってくれたら……あ、止んできてないかこれ!」
「えっ?」
窓を見やると、じきにまた空が明るくなって雨も弱まっていた。まるで誰かがこの地に気まぐれに水まきでもしていたみたいに。
「よぉし、これくらいなら体育いけるっしょ」
「……無くなると思ってたのに」
どんまい、と軽く返されたところで予鈴が鳴り、会話は終わってしまった。
「勘弁してよ……、思わせぶりだな……」
気まぐれな通り雨を降らせてきた窓の向こうの空を、私は誰にもばれないように、軽く睨みつけた。
【通り雨】
9/27/2024, 3:33:53 PM