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『星が溢れる』

松本に住む彼女に会いに行って、僕はあった瞬間に強く抱いた。
柔らかな身体は、僕の懐にピッタリと合い、そして彼女も僕の背中に両手を回した。

松本に着いたのは夜の10時を回った頃。
リュックのショルダーを直そうとしていた時、彼女はすぐ隣にやって来て
『いらっしゃい、疲れた?』
って笑いながら僕の腕にしがみついた。

僕は彼女の手を取り、辺りを見回す。
高架下があって、そこに向かって彼女をピタリと横につけた。

薄暗い。
彼女を壁に追いやって、激しいキスをする。
『誰か見てるかも』
彼女はそう言うけれど、僕の気持ちは収まらない。
彼女の吐息と僕のとが混ざり合ってゆく。

堪能し終えると、彼女は深呼吸する。
『いきなりでびっくりしたよ』
『ごめんごめん』
また手を繋いだ。

彼女の家に向かう。
秋の寒さがじんわり堪えた。

特に会話はない。
僕があまり無口なせいか、彼女も黙って歩いている。

寒空を見上げれば、星空がいつも以上に溢れている。
見つめると、また怖くなって目線をすぐに逸らした。

『なに食べたい?』
聞かれたので、考えてみる。
『んー、そうだなぁ』
また星空を見遣る。
ふたりで食べる食事は格別だろうと、星に相談してみる。

3/15/2026, 11:12:08 PM