荼毘

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「before your eyes」

テーマ 「光と闇の狭間で」

ショートショート ユーモアファンタジー


瞼を開くと、霧がかったどんよりとした空が見えたんだ。そして、ここが木製のボートの上だということは分かった。そしてどこかへ向かっているみたい。けれど漕いでいるのは僕じゃなくて、別の人。人っぽいんだけれどどうみても顔がキツネさんなんだ。キツネみたいな顔つきという意味じゃなくて、まるっきり顔がふさふさのキツネなんだ。腕もオレンジ色と金色を混ぜたような綺麗な毛色でふさふさ。そんな人がボートを漕いでる。その人は僕のことをじっと見ててちょっと怖い。ボートの上にはそのキツネみたいな人と僕の2人だけ。どういう状況なのか僕は分からないまま、落ち着かないし、不安で、夢の中なんじゃないかと思えてきていた。
「君は裁かれにいくんだよ」
優しいけれどどこか悲しげな声でそう聞こえた。
キツネみたいな人はゆっくり、ゆっくりオールで漕ぎながら続けた。
「君は何をしていたのか覚えてる?」
僕は突然声をかけられ、慌てふためいておどおどしてしまった。僕は記憶を辿ろうと思ったけれど、ぼんやりとあいまいなことしか覚えていなくて、答えられそうにない。

12/2/2023, 5:44:17 PM