「君と」
ああ、お母様。あの方と私はお会いできませんの?
一度でも良いから、あの方に挨拶だけでも______。
すまぬ、我が愛しの娘。わしの力では、どうすることもできぬのだ。逆らえぬのだ。季節には。
お前は今を任されし主役ではないか。そして、あの小僧はお前の次を担うものだ。お前が今を全うすれば、それ以上に小僧が幸せなことは無かん。
_______分かりましたお母様。ではそろそろ参りますね。
ひとひらの桜の花が、地上に静かに舞い落ちた。
やがて夏に近づき、樹齢何千年と年月を超えた木には、葉がぎっしりと茂っていた。そこから真っ直ぐに降りる木陰は、今や動植物の癒しの場となっている。
桜の花は幸せだった。紅色の実に姿は変われども、そうした形で、あの方_______葉に出会えたから。
4/3/2025, 11:25:50 PM