すれ違う人々が、きっと普段より大きく避けている。
高いハイヒールをツカツカと鳴らし、横目に見る通行人に見向きもしない。たっぷりとマスカラをつけたまつ毛は、吊り上がった目をより際立たせる。
彼女は目に見えて憤慨していた。
オッス、久しぶり。今暇か?
おいアイツ大丈夫かと、見ず知らずのカップルは不安げな顔をして通り過ぎる。
彼女は気が抜けるような声をかけた男を認知する。左手の指輪を男に見せつけてからそれを抜き取り、澱んだ川にぶん投げた。
……オッケイ。朝まで飲み明かそうぜ。
男は彼女の肩を抱いて、二人は夜の街へと消えて行った。
5/15/2022, 4:57:17 AM