NoName

Open App

「失われた長い時間」

中学生は一人だけの教室に行き、授業を受けていました。

早く沢山の人々が居る部屋に行って、
皆と一緒に授業を受けたい。

中学生は必死に小学校の問題を解いていました。


ある日、障害者の就労施設の見学に行く事になりました。
その事をお母さんに伝えると、

「出来損ないのアンタにピッタリだね。
そこしか働き先が無いなんて悲しいね」

と、中学生に言いました。


見学当日、中学生は初めて目にする就労施設を見て、

「将来はここで働くんだね。
本当は動物のお世話をする仕事がしたかったんだけど…」

と思いました。

就労施設の中はダンボールでごった返していて、
中学生は危うく転びそうになりました。

「どうだい?就労施設は?」

施設の職員は中学生に優しく語りかけました。

「ここしか働く所は無いんですか?」

「残念だけど、君が働く場所は就労施設以外無いんだ」

担任は中学生に言いました。

中学生は、部屋の隅にうずくまっている男性を
見つけました。

「ああ、彼は小学校の頃に酷いイジメを受けて
不登校になったんだ。その時に病気を発症して、
普通の会社じゃ働けなくなったから
この施設で働いているんだよ」

施設の職員は淡々と利用者の説明をしました。

「?」

「何言ってるんだろう?」
と、中学生は不思議に思いました。

普通の世界で生きられなくなった者は
隔離された世界へ送られ、幽閉生活を送る。
障害者も例外ではない。

障害者だって、自分の主張を通して
やりたい事や行きたい場所へ行って
人生を謳歌したい。

だけど、障害者は「当たり前」の権利が無い。

中学生は寂しい気持ちになりました。

10/22/2021, 11:09:10 AM