こゆき

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もう15年ほど前のことだが、飼っていた猫を交通事故でなくしてから、突然の別れの辛さを知った。
うちに来たのは産まれたばかりの頃だった。
指の先にミルクをつけて、舐めさせるところから育てた。半年ほどだった頃、彼は日に日に好奇心旺盛なオス猫になり、外に出たがった。
その夜、初めての外出だった。ほつれていた網戸の隙間からするっと抜け出したようだった。 彼のいなくなった後の網戸の端にはカマキリが止まっていた。なんだか嫌な予感がしたが、そのうち帰ってくるだろうと思っていた。
しかし、夜が深まっても帰ることはなかった。
帰ってこれなくなってるのかもしれない。と家の周りを見回ったが真っ暗闇で全く見つけられなかった。

明け方まで待って、家の周りを一周した時すぐに彼は見つかった。
道の端っこで真っすぐに身体を伸ばした状態で、目を開いていた。車かバイクにはねられ、人の手によって道の隅に寄せられたのだと認識するのに時間はかからなかった。
彼を見つけた時の喜びと同時に彼の死を認識した悲しみで、わけが分からなくなった。
突然の別れの辛さが時間が経つごとにじわじわと湧き上がりしばらく私は放心状態だった。

それから別れが極端に怖くなった。
大切な人と離れるのが怖い。少し連絡が途絶えると永遠の別れを想像してしまうのだ。
あれから猫を飼っても一度も外には出さないし、子供を一人で外出させるのも本当に怖い。夫ですら、何かあったらと心配でたまらない。
20年も経つのにこうなのだから、これからも変わらないだろう。
あの別れは私の生き方を変えたのだ。

彼の教えてくれたことは、突然の別れはいつ来るか分からない。今いる人を大切にして、今を一生懸命生きる。という事だったのかもしれない。
でも私はまだ、毎日不安でいっぱいだ。
いつかはもっと自由に伸び伸びと生きられるようになりたいと願っているのだけど、、

「突然別れ」

5/19/2023, 11:25:23 AM