四十四歳
私は一度も結婚をした事がなく、子供もいない。
仕事や趣味に打ち込んできたから婚期を逃した訳ではない。ただ恋人が一度も出来たことがないからだ。だから必死で仕事をしてお金を稼ぎ、心の隙間を埋めるために習い事に精を出してきただけなのだ。
女性からは人気があるほうだと思う。職場でも習い事でも決まって皆が良くしてくれて、食事や遊びに誘ってもらえる。それはそれでありがたいのだが、私が本当に望んでいるのはそれではない。
たった一人の恋人が欲しい。
もう世間的には子供は諦める年齢だろうか。パートナーがいて妊活がうまくいかず辛いと嘆く人がいるが、パートナーのいない私はスタートラインにさえ立てない。
子供がいないから
独身だから
実家住まいだから
そんな理由で子持ち、主婦の人たちの仕事の尻拭いを幾度もしてきた。
表向きはニコニコ笑って仕事をこなしたが、恨みは募るばかりだ。
「奥さん」そう呼ばれると不快でたまらない。
子供も夫もいない私の前で家庭の話ばかりする人がいる。
それを共感したようなふりをして真剣に聞いてる自分も嫌い。
配慮のない人たちは無自覚に人を傷つける。配慮も出来ないくせに人並みの生活をしている。
中には自分達の辛さを声高に訴える人達がいる。
でも私はそれはしない。
格好悪いと思うから。
今まで信じてきた事が全て間違っていたような感覚だ。
自分らしく
信念を持って
人に優しく
こんなものは婚活や恋愛には何にも役に立たなかった。
気づいたらもう四十四歳。
これも真面目に将来を考えて来なかった私が悪いというのだろうか。
8/15/2023, 2:40:31 PM