はじめて観たとき、言葉が出なかった。
まるで心臓が、時が止まったようだった。
草原に座る彼女は僕と同じ人間におもえなかった。
彼女の周りは花が咲き、蝶が舞い、鳥や動物が唄っていた。
太陽が彼女にピンスポットを当てているようだった。
神か天使か乙女か姫かなんだかわからない。
でも、彼女の存在が美しかったんだ。
目が離せなかったんだ。
風の音がする。
心地よい音だ。
子供の頃以来、聴いていない。久しぶりだ。
手に持っていたロープを鞄にしまい、僕が生きてきた唯一の証であるスケッチブックを出した。
まさか、この最後の紙に絵を書くと思わなかった。
僕はまたペンを手に取った。
この瞬間を忘れないように。
8/8/2022, 2:41:57 PM