「あーあ、またやってる。」
君の声に、振り向いた。
君は呆れたような顔で、私の足元を見ていた。
私は視線を落とした。
靴紐が解けていることに、やっと気づいた。
「…やってやるから、足貸して。」
君は苦笑して、私の前でしゃがみこんだ。
君は当たり前かのように、靴紐に手を伸ばす。
私は足を前に出した。
慣れた手つきで、靴紐は結ばれていった。
「いい加減、ちゃんと結びなよ。」
ちゃんと結べば解けないのに、と君は言う。
その顔には、呆れと、少しの楽しさが混じって見えた。
私は結び目を見て微笑む。
少しの申し訳なさと、律儀さへの感謝が込み上げる。
「…まぁ、いっか。解けても俺がいるし。」
君はベタな恋愛ものによくありそうな言葉を呟く。
君は笑いながら、手を引いてくれる。
私は君に着いていく。
これが私達の、幸せな日常だった。
でも。
幸せと言うものは、思った数倍に脆いもので。
少し触れただけで、崩れ落ちてしまうんだ。
だから。
仕方の無いこと、なんだろう。
·····
嘘吐き。
「…俺がいる、って、言ってたじゃん」
私の靴紐は、もう二度と直らない。
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投稿9 「君がいないとダメなのに」
題:靴紐
9/17/2025, 3:58:13 PM