ちょうど1年前、きらめきじしいが目の前を歩いていた。
きらめきじじいとは平日の夜、人気のない夜道に現れる金色に発光した中年男性で、食べ物か缶コーヒーを渡すと少しの幸運が訪れるという噂話。
...できれば噂のままであってほしかった。
自発的に輝く中年男性と夜道でエンカウントしたうえに食料を失う不幸の対価がほんの少しの幸運とは釣り合いが取れていないにも程がある。
しかし、食べ物を渡さなかった場合どうなるのかわからない。ひょっとすると後ろをついてくる等の迷惑行為に及ぶかもしれない。
仕方なく家に帰ってから食べようと思っていたコンビニ大福を輝く中年に差し出した。
「おっ 悪いね。ちょうど小腹がすいてたんだよガハハ」
発光中年は謎の笑い声を上げながら大福を手にとって口に放り込む
瞬間、そこには何もなかったかのように、発光中年は消えてしまった。
今になってふときらめきじじいと遭遇した事を思い出したのは、結婚式の日程がちょうどきらめきじじいを見てから1年後だったからだ。
そしてすぐさまきらめきじじいの記憶を抹消しようと心に誓った。
9/4/2024, 11:38:35 AM