谷川進

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テーマ 列車に乗って

列車に乗って友人と遠出をした。間違いなくお互いにとって素晴らしい思い出となる一日だった。
帰り道。私と友人は住んでいる場所が違うため、駅で別れることになった。電車を待つ間ふと反対側のホームを見ると友人がたっていた。向こうもこちらに気づいて手を振ってきた。私は恥ずかしいながらも手を振り返した。すると、友人がおもむろに鞄からスマホを取り出した。そしていそいそと、画面を操作すると私のポケットがなった。私は思わず笑みがこぼれ、直ぐに電話に出た。やはり友人だった。
「今日楽しかったな」
向こうからも、電話からも友人の声がする。なんとも言いがたい幸福が私を満たした。
「そうだな」
私は友人の顔を見て答えた。友人も気分が上がっているのかこちらを見て破顔している。線路たったの二つ分。この絶妙な距離感からの酔狂な電話に私たちは高揚させられていた。そして強固な絆を感じた。
それからほぼ同時に電車がホームに滑り込んできた。私は名残惜しくも電話を切り友人に手を振った。向こうも振り返した。電車に乗り込み席に座ると、友人からメールが届いた。
「また行こうぜ」
私はそれに同意の返信をした。
実際のところ出掛けるのは好きではない。友人がいなければ私は早々に、出不精の烙印を押されているだろう。ただ誰かと出掛けるのを完全に否定しているわけでわない。それはそれでもちろん楽しいものだと認識している。しかし、別れた後のこの虚無感は耐えがたいものだった。一人になった瞬間、辛くて辛くて堪らない。こんな私の気持ちも知らず、次の話をする友人の純粋さに嫉妬をしながらも、直ぐに返信をする私も私だなと、列車から過ぎて行く景色を見て思った。

2/29/2024, 1:16:55 PM